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第66回 【朝方の悪夢】

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【注】上の写真は本文とは関係ありません。

仕事の関係で昔の書類が急遽必要になった。

隣街に借りている倉庫の奥から書類の詰まった段ボールを引っ張り出し、
なぜか10年以上も前に取り壊されたはずの実家に持ち帰る。

2階の自室で段ボールを開けると、いきなり巨大なクモが現れて吃驚仰天!

そいつはいくら殺虫剤をかけても平気な顔で部屋中を這い回り、
ついにはクロのお腹にあるビニールの蓋を自分でこじ開けて中に隠れた。

クロにはかわいそうだが殺虫剤をその顔面にまともに噴きかける。
少しの辛抱だからがまんしてね、クロ。

しかしクロの腹中から再び這い出たクモは息絶えることなく今度は押入れに飛び込む。
その上驚いたことにそいつは押入れの中で人間、それも強盗に姿を変えた。

気がつくと殺虫剤もすべて噴射し尽くしてしまった。
仕方なく強盗に大声で呼びかける。

「今、デジカメにオマエの証拠写真を撮るからな、そこで待ってろ!」

すると強盗は押入れから飛び出し、一目散に逃げていった。

ホッと一息ついてクロを振り返り、その姿を見て愕然!

殺虫剤が原因で色落ちしたのか、クロが全身灰色になっている。
しかもサラサラだった毛並みは乾いた雑巾のようにパサパサだ。

取り返しのつかないことをしてしまった、どうしよう?

しかもなんと、そこへ妻がトントンと階段を上ってやってきた。

灰色に変色したクロを隣の部屋に隠し、障子を閉め、
妻を自室の上座に座らせ、

「実は、たいへん申しわけないことをしてしまいました!」

と、畳に頭をこすりつけて彼女に詫びた瞬間、目が覚めた。

ベッドから飛び起きて自室を飛び出し、
居間のソファですやすやと眠る、いつもと変わらぬ真っ黒なクロを見て

「ああ夢でよかった~」と、思わずその場にへたり込みそうになる。

・・・まあ今思えば、灰色のクロもそれなりに可愛かったけど。


【追記】

クロのお腹にビニールの蓋などありません。
もちろんお腹の中も空洞ではなく、綿がつまっているはずです。
 

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おじちゃん

現在63歳の自営業男性
妻とクロ、赤ちゃんとの4人暮らし。