
翌日は月曜日。
いつものようにバスで19:20に帰宅し、自宅玄関ドアを開けた。
自宅は集合住宅で、
玄関を入ると申しわけ程度の短い廊下の先に居間があり、
3人がけのソファが狭い空間を占領している。
そのソファの端にちょこんと座る黒く小さい物体と、
ふと目が合ってしまった。
ん? 昨日とは何かが違うぞ。
近寄ってよく見ると、
ぬいぐるみの首にワインカラーのリボンが巻かれている。
「バレンタインデーにお義母さんからもらったゴディバのチョコね、
その包装に使われていたリボンを巻いてみたの、似合うでしょ」
と妻。
確かにワインカラーのリボンが黒に良く映える。
いやそれどころか、さらに可愛さが増したように思える。
そして次の瞬間、私は自分でも信じられない行動に出た。
ぬいぐるみを抱き上げて一言。
「いいリボン付けてもらったね、よかったね~クロ!」
妻は一瞬、呆気に取られたような表情を浮かべたが、
すぐに気を取り直し、
「名前はクロに決定ね、でもお義母さんにあげちゃうんでしょ?」
「いや、それはやめよう、せっかくウチに来たんだから。
実家には同じの買えばいいよ、ネットで買えるでしょ、ねえクロ♪」
「よかったね~クロ、おじちゃんがうちに置いてくれるって。
おねえちゃんが思った通りになったね~」
ずるいぞ、自分だけ「おねえちゃん」か。
まあ確かに私は堂々たるおじちゃんだが。
・・・再来年6月に還暦を迎えたら今度は「おじいちゃん」か(嘆)。
ともあれ、ここに晴れて新しい家族が誕生した。
物言わないどころか、ピクリとも動かない家族だが。
(逆に動いたら怖い)
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