第2回 【ゴディバのリボン】

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翌日は月曜日。
いつものようにバスで19:20に帰宅し、自宅玄関ドアを開けた。

自宅は集合住宅で、
玄関を入ると申しわけ程度の短い廊下の先に居間があり、
3人がけのソファが狭い空間を占領している。

そのソファの端にちょこんと座る黒く小さい物体と、
ふと目が合ってしまった。

ん? 昨日とは何かが違うぞ。

近寄ってよく見ると、
ぬいぐるみの首にワインカラーのリボンが巻かれている。

「バレンタインデーにお義母さんからもらったゴディバのチョコね、
その包装に使われていたリボンを巻いてみたの、似合うでしょ」

と妻。

確かにワインカラーのリボンが黒に良く映える。
いやそれどころか、さらに可愛さが増したように思える。

そして次の瞬間、私は自分でも信じられない行動に出た。
ぬいぐるみを抱き上げて一言。

「いいリボン付けてもらったね、よかったね~クロ!」

妻は一瞬、呆気に取られたような表情を浮かべたが、
すぐに気を取り直し、

「名前はクロに決定ね、でもお義母さんにあげちゃうんでしょ?」

「いや、それはやめよう、せっかくウチに来たんだから。
実家には同じの買えばいいよ、ネットで買えるでしょ、ねえクロ♪」

「よかったね~クロ、おじちゃんがうちに置いてくれるって。
おねえちゃんが思った通りになったね~」

ずるいぞ、自分だけ「おねえちゃん」か。
まあ確かに私は堂々たるおじちゃんだが。
・・・再来年6月に還暦を迎えたら今度は「おじいちゃん」か(嘆)。

ともあれ、ここに晴れて新しい家族が誕生した。
物言わないどころか、ピクリとも動かない家族だが。
(逆に動いたら怖い)
 

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おじちゃん

現在59歳の自営業男性
妻とクロとの3人暮らし。